トランスフォーマー・ロックマン・忍たまを扱っている非公式ブログ。女性向け注意!
Posted by 月 - 2011.11.13,Sun
こんばんは、久しぶりの更新です。
ですが半端です申し訳ない…
どうにも遅々として進まないので自分に発破をかけるために
途中までですが上げることにしました。
残りは今月中には上げ…られるといいなぁ。
それでは、
「こへちょ成長記録」の続編。
年齢操作有り。
大丈夫な方は以下、続きを読むより
ですが半端です申し訳ない…
どうにも遅々として進まないので自分に発破をかけるために
途中までですが上げることにしました。
残りは今月中には上げ…られるといいなぁ。
それでは、
「こへちょ成長記録」の続編。
年齢操作有り。
大丈夫な方は以下、続きを読むより
冷たい風が吹いたかと思えば、次の瞬間には暖かい風が吹く。
木々も人々も忙しない風に身を縮めては綻ばせ、少しずつ訪れる芽生えの季節を待つ。
その中、下級生たちはひとつ階段を上がり、六年生は庇護を離れ、それぞれの道を歩む。
そして、また学園に新たな卵たちが誕生した。
【怪訝】
窓の外には新しい鮮やかな緑と、長年そこにあるのだろうと感じさせる深みのある緑が入り混じった木々がそこかしこにあった。
故郷を出た時周りは所々雪が残り、地面はまだ寒々しく凍えていたと言うのに、忍術学園へ入学し早ひと月が過ぎようとしている今では地面から雪はすっかり消え失せ、代わりに今では土筆やふきのとう、よもぎと春の山菜が芽を出し、地面を柔らかな色で染めている。
たった十数日の事なのに季節の移り変わりは目紛るしいな、と故郷を出た時を思い出し感慨に耽った。
「おーい、雷蔵! そろそろ行こうぜ」
「え?」
「おいおい、聞いてなかったのか? 委員会だよ委員会! 今日雷蔵当番だろ?」
「あぁ、ごめん。今行くよ」
元気の良い溌剌とした声に呼ばれた事に気が付き、視線を窓の外から内へ向けると、そこには三郎と八左ヱ門の姿があった。外を眺めていて時間が経つのを忘れてしまっていたようだ。いつまでも動かない僕を見て声を掛けてくれたらしい。
ごめんごめんと軽く手を合わせて謝れば、八左ヱ門はしょうがねぇなぁと笑う。ぼさぼさとあちこち飛び跳ねる髪に陽の光に反射して、薄鈍色の髪がきらきらと輝く。それが笑っている八左ヱ門を更に明るく、溌剌とした印象を見る者に与えている。
八左ヱ門に笑って返すと、今度は三郎が何が面白いものを見つけたような、何か企んでいるとも取れる顔で覗き込んでくる。まるっきり僕と同じ顔で、僕とは全く違う表情を浮かべているのが面白い。三郎は誰にでも変装できるようだけど、僕の顔をしている事が多い。理由を聞いたらしたり顔で内緒、と言われてしまったが、まぁいいかとそのままにしている。
「また何か悩んでいたのかい?」
「違うよ、ちょっと外を眺めていただけさ」
「外? 何かあるのかい」
三郎が窓の外を見るが、そこには放課後を迎えた生徒たちが思い思いに遊んでいたりするだけだ。実際、そこを見ていたわけでは無いので、特に目立ったものがあるはずがない。
八左ヱ門も同じく外を見るがすぐに何もないぞ? と首を捻るばかり。三郎も同じく何も言わないが同じように思っているだろう。
「何もないよ、本当。ただ、春だなぁっと思ってさ」
「春ぅ?」
「あぁ! そうだなぁ、生き物がいっぱい生まれる、いい季節だ!」
三郎はさも不思議そうに、八左ヱ門は生き物が大好きらしく、春は良いと満面の笑みを浮かべる。
それぞれ反応が違って面白い。
「それだけだよ、さ、委員会に行かなくちゃ」
そう言って腰を浮かせ、さぁ行こうと三郎と八左ヱ門の背中を押す。
三郎はどこか納得がいかないような顔をしていたけど、本当に何もないのだからどうしようもない。何かと好奇心旺盛な三郎にとって、僕の行動はさぞ不可解に映っているのだろう。探ろうとする視線を躱しつつ、見えないように影でこっそりと笑った。
「おぉっとそうだった! んじゃ行こうぜ!」
「……はいはい、それじゃ、行きますか。今日はどんなお菓子が出る事やら」
三郎はふぅ、と溜息を吐くと、次の瞬間にはだらしなく緩んだ。委員会の度に出るというお菓子に思いを馳せているのだろう。
三郎が所属する学級委員長委員会は、特に主だった活動はなく、何か行事がある時ぐらいしか活動しないので、日頃は学園長の庵で他の委員たちとお茶をするのが専ららしい。なんとも羨ましいような、それでもそれが毎回続くのかと思うとつまらないような、微妙なところだ。
「三郎んとこはお菓子が出るからいいよなー、でも生物委員会だって、蜂蜜だとか木の実とか食べられるけどな! 今日は裏山に入って毒虫の種類を教えてくれるらしくってさぁ、ちょっと怖いけどな、楽しみなんだ!」
「お菓子より毒虫が楽しみねぇ……さすが八左ヱ門だ」
「どういう意味だよ三郎! 別にいいだろ」
三郎がやれやれ、と肩を竦めると八左ヱ門はむくれて食って掛かる。
それにしても、楽しみなんだろうなと思うが、毒虫と聞くとどうにも心配せずにはいられない。
「刺されないように気をつけてよ?」
「あぁ大丈夫さ! 先輩たちもいるし、いざという時の為に薬も持って行くみたいだから大丈夫、じゃねぇかな?」
八左ヱ門はけろりと暢気とも取れる調子で言うが、その言葉とは裏腹に、瞳は落ち着いた色を放っている。八左ヱ門は生き物に真剣だ。それはまだ共に生活してひと月も経っていないけど、十二分に伝わってくる。……僕が心配は杞憂らしい。
「雷蔵の方はどうなんだ? 今日は何やるか決まってんのか?」
「僕の方は……本の貸出と整理ぐらいだよ」
肩を竦めていつもと変わらないさ、と言うと八左ヱ門は、ふーん、と気のない返事をした。八左ヱ門の事だから、きっとつまらなそうだな、とでも思われているのだろう。
「なんかつまんなそうだなー?」
「そうかい? 好きに本を読んでいいと言うのなら、中々良いと思うけど……まぁ八左ヱ門には縁のない話か」
予想通りの事を考えていた八左ヱ門に、またしても三郎がちょっかいを掛ける。止めればいいのに、人をからかう事が大好きな三郎にとって素直な反応を示す八左ヱ門は格好の標的なんだろう。事実、八左ヱ門は三郎に食って掛かっているし、それを受け流して更にからかう三郎の表情は嬉々としている。
学園に入学してまだひと月と経っていないというのに、これが当たり前になってしまっているのだから呆れるばかりだ。そしてそれを中断させるのも僕の役目。何時の間にかそれが常となった。
「ほらほら二人とも! 三郎、八左ヱ門をからかわないの! 八左ヱ門も三郎がからかってるって分かってるのにそんなに向きにならないの! 委員会に遅れちゃうよ!」
二人の間に割り込み、後ろから軽く頭を叩いて止める。
三郎は大袈裟に痛がって見せるがそれを無視する。八左ヱ門はばつの悪い顔をして頭を掻くと、軽く手を合わせて謝った。三郎もこのぐらい素直ならいいのに。
*
そんなお喋りを繰り広げながら歩んで行くうち、気が付けばもう二人と別れる場所まで辿り着いていた。
「それじゃ、また後でなー!」
「またね! 八左エ門怪我しないようにね!」
「行ってこーい。……じゃ、私も行くよ。また後でね、雷蔵」
「うん、三郎もいってらっしゃい。また後で」
八左ヱ門が元気よく駈け出し、続いて三郎がのんびりと学園長の庵へと向かうのを見届けた後、僕も図書室へと歩みを進めた。
本は水気と光、火気を嫌うので、学園の中でも比較的隅の方にある。渡り廊下で結ばれているが、そこまでの道のりはあまり人気がなく寂しい。
今も校庭の方からは皆の声がここまで響いてくるというのに、渡り廊下には僕一人しかいない。実に寂しいものだ。
そんな事を取り留めもなく考えていれば、すぐに図書室に着いてしまった。
今日一緒の当番は誰だったかな……、と考えつつ戸に手を掛ける。
かたん、と音を立てて戸を開くと、途端に古びた紙と墨の匂いがふわりと鼻腔を擽った。
部屋の中は昼間だと言うのにほんのりと薄暗い。火気の使用が認められないここでは火皿などの灯りは存在せず、日の光は本を傷める原因となるため、窓も本棚に直接明かりが届かない位置にある。
その薄暗い中に、ぽつんと小さな人影がひとつ、あった。
見覚えのある今桔梗色の制服。困ったように垂れ下がった眉に、きゅっと結んだ口。
一つ上の図書委員、中在家長次先輩だ。
「こんにちは、中在家先輩」
「……こんにちは」
ぽそり、と小さく零れた音に、小さく会釈を返す。
中在家先輩は貸出机に座り、手元には本が開かれていた。今まで読んでいたのだろう。静かな図書室で、静かに本を読んでいる人。どことなくこの雰囲気を壊すのが忍びなく思い、出来るだけ静かに戸を閉め中在家先輩の隣へと腰を下ろした。
「今日は中在家先輩となんですね。よろしくお願いします」
「……ん」
中在家先輩は短く応えを返すと、本に栞を挟み貸出机の中へと仕舞うと、今度は帳簿を取り出して席をを立った。
「今日はまず、本を戻そう……」
ぽそりと聞こえた声に従い、中在家先輩の後を追う。
図書室に来て、まず始めにやる事といえば、本の返却作業だ。
一年生から六年生、食堂のおばちゃん、先生に学園長、果てはヘムヘムと幅広く利用するために、返却された本を一時的に置いておく本棚は真新しい冊子から古びた巻物まで、実に様々な書物がずらりと並んでいる。
中在家先輩は僕に帳簿を渡すと、ずらりと並ぶ書物を抜き出して本棚の間へと消えていった。驚くべき事に、中在家先輩は……いや、中在家先輩だけに限らず、図書委員長や四年生の先輩も、ある程度ならどの書物がどこに仕舞うべきものなのか把握しているらしい。大抵僕に帳簿を預けてしまうと、後はせっせと本の返却作業へと勤しむのだ。
僕はまだ書物をどこに仕舞えばいいのか分からないので、帳簿を片手にちまちまと書物を戻していく。
一冊ずつ本の背表紙と帳簿を見比べては、本棚に記された記号を探して元に戻す。のろのろと時間が掛かってしょうがないが、これでも最初に比べたら少しは早くなったのだ。
途中、ちらりと中在家先輩の姿を目にしたけど、中在家先輩は両手でいくつもの書物を抱えては、すとんすとんと書物を戻していく。どこに何があるべきなのか分かっているその動きは澱みなく一定だ。
書物を本棚へと戻しつつ、視線の端にちらちらと映る中在家先輩をこっそりと見る。
自分から喋る事は少ない中在家先輩は、僕にとってはどうにも近寄り難い雰囲気を持つ。
委員会中の会話は最低限、そしていつも哀しそうな、と言おうかどこか困ったようなような表情が常のため、どうにも視線を向けにくい。沈黙が続き息苦しいと思うけど、かと言って声を掛けることも憚られるため、互いに一言も口を挟む事無く、傍目には淡々と仕事を熟して行った。
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途中ですがここまで。
木々も人々も忙しない風に身を縮めては綻ばせ、少しずつ訪れる芽生えの季節を待つ。
その中、下級生たちはひとつ階段を上がり、六年生は庇護を離れ、それぞれの道を歩む。
そして、また学園に新たな卵たちが誕生した。
【怪訝】
窓の外には新しい鮮やかな緑と、長年そこにあるのだろうと感じさせる深みのある緑が入り混じった木々がそこかしこにあった。
故郷を出た時周りは所々雪が残り、地面はまだ寒々しく凍えていたと言うのに、忍術学園へ入学し早ひと月が過ぎようとしている今では地面から雪はすっかり消え失せ、代わりに今では土筆やふきのとう、よもぎと春の山菜が芽を出し、地面を柔らかな色で染めている。
たった十数日の事なのに季節の移り変わりは目紛るしいな、と故郷を出た時を思い出し感慨に耽った。
「おーい、雷蔵! そろそろ行こうぜ」
「え?」
「おいおい、聞いてなかったのか? 委員会だよ委員会! 今日雷蔵当番だろ?」
「あぁ、ごめん。今行くよ」
元気の良い溌剌とした声に呼ばれた事に気が付き、視線を窓の外から内へ向けると、そこには三郎と八左ヱ門の姿があった。外を眺めていて時間が経つのを忘れてしまっていたようだ。いつまでも動かない僕を見て声を掛けてくれたらしい。
ごめんごめんと軽く手を合わせて謝れば、八左ヱ門はしょうがねぇなぁと笑う。ぼさぼさとあちこち飛び跳ねる髪に陽の光に反射して、薄鈍色の髪がきらきらと輝く。それが笑っている八左ヱ門を更に明るく、溌剌とした印象を見る者に与えている。
八左ヱ門に笑って返すと、今度は三郎が何が面白いものを見つけたような、何か企んでいるとも取れる顔で覗き込んでくる。まるっきり僕と同じ顔で、僕とは全く違う表情を浮かべているのが面白い。三郎は誰にでも変装できるようだけど、僕の顔をしている事が多い。理由を聞いたらしたり顔で内緒、と言われてしまったが、まぁいいかとそのままにしている。
「また何か悩んでいたのかい?」
「違うよ、ちょっと外を眺めていただけさ」
「外? 何かあるのかい」
三郎が窓の外を見るが、そこには放課後を迎えた生徒たちが思い思いに遊んでいたりするだけだ。実際、そこを見ていたわけでは無いので、特に目立ったものがあるはずがない。
八左ヱ門も同じく外を見るがすぐに何もないぞ? と首を捻るばかり。三郎も同じく何も言わないが同じように思っているだろう。
「何もないよ、本当。ただ、春だなぁっと思ってさ」
「春ぅ?」
「あぁ! そうだなぁ、生き物がいっぱい生まれる、いい季節だ!」
三郎はさも不思議そうに、八左ヱ門は生き物が大好きらしく、春は良いと満面の笑みを浮かべる。
それぞれ反応が違って面白い。
「それだけだよ、さ、委員会に行かなくちゃ」
そう言って腰を浮かせ、さぁ行こうと三郎と八左ヱ門の背中を押す。
三郎はどこか納得がいかないような顔をしていたけど、本当に何もないのだからどうしようもない。何かと好奇心旺盛な三郎にとって、僕の行動はさぞ不可解に映っているのだろう。探ろうとする視線を躱しつつ、見えないように影でこっそりと笑った。
「おぉっとそうだった! んじゃ行こうぜ!」
「……はいはい、それじゃ、行きますか。今日はどんなお菓子が出る事やら」
三郎はふぅ、と溜息を吐くと、次の瞬間にはだらしなく緩んだ。委員会の度に出るというお菓子に思いを馳せているのだろう。
三郎が所属する学級委員長委員会は、特に主だった活動はなく、何か行事がある時ぐらいしか活動しないので、日頃は学園長の庵で他の委員たちとお茶をするのが専ららしい。なんとも羨ましいような、それでもそれが毎回続くのかと思うとつまらないような、微妙なところだ。
「三郎んとこはお菓子が出るからいいよなー、でも生物委員会だって、蜂蜜だとか木の実とか食べられるけどな! 今日は裏山に入って毒虫の種類を教えてくれるらしくってさぁ、ちょっと怖いけどな、楽しみなんだ!」
「お菓子より毒虫が楽しみねぇ……さすが八左ヱ門だ」
「どういう意味だよ三郎! 別にいいだろ」
三郎がやれやれ、と肩を竦めると八左ヱ門はむくれて食って掛かる。
それにしても、楽しみなんだろうなと思うが、毒虫と聞くとどうにも心配せずにはいられない。
「刺されないように気をつけてよ?」
「あぁ大丈夫さ! 先輩たちもいるし、いざという時の為に薬も持って行くみたいだから大丈夫、じゃねぇかな?」
八左ヱ門はけろりと暢気とも取れる調子で言うが、その言葉とは裏腹に、瞳は落ち着いた色を放っている。八左ヱ門は生き物に真剣だ。それはまだ共に生活してひと月も経っていないけど、十二分に伝わってくる。……僕が心配は杞憂らしい。
「雷蔵の方はどうなんだ? 今日は何やるか決まってんのか?」
「僕の方は……本の貸出と整理ぐらいだよ」
肩を竦めていつもと変わらないさ、と言うと八左ヱ門は、ふーん、と気のない返事をした。八左ヱ門の事だから、きっとつまらなそうだな、とでも思われているのだろう。
「なんかつまんなそうだなー?」
「そうかい? 好きに本を読んでいいと言うのなら、中々良いと思うけど……まぁ八左ヱ門には縁のない話か」
予想通りの事を考えていた八左ヱ門に、またしても三郎がちょっかいを掛ける。止めればいいのに、人をからかう事が大好きな三郎にとって素直な反応を示す八左ヱ門は格好の標的なんだろう。事実、八左ヱ門は三郎に食って掛かっているし、それを受け流して更にからかう三郎の表情は嬉々としている。
学園に入学してまだひと月と経っていないというのに、これが当たり前になってしまっているのだから呆れるばかりだ。そしてそれを中断させるのも僕の役目。何時の間にかそれが常となった。
「ほらほら二人とも! 三郎、八左ヱ門をからかわないの! 八左ヱ門も三郎がからかってるって分かってるのにそんなに向きにならないの! 委員会に遅れちゃうよ!」
二人の間に割り込み、後ろから軽く頭を叩いて止める。
三郎は大袈裟に痛がって見せるがそれを無視する。八左ヱ門はばつの悪い顔をして頭を掻くと、軽く手を合わせて謝った。三郎もこのぐらい素直ならいいのに。
*
そんなお喋りを繰り広げながら歩んで行くうち、気が付けばもう二人と別れる場所まで辿り着いていた。
「それじゃ、また後でなー!」
「またね! 八左エ門怪我しないようにね!」
「行ってこーい。……じゃ、私も行くよ。また後でね、雷蔵」
「うん、三郎もいってらっしゃい。また後で」
八左ヱ門が元気よく駈け出し、続いて三郎がのんびりと学園長の庵へと向かうのを見届けた後、僕も図書室へと歩みを進めた。
本は水気と光、火気を嫌うので、学園の中でも比較的隅の方にある。渡り廊下で結ばれているが、そこまでの道のりはあまり人気がなく寂しい。
今も校庭の方からは皆の声がここまで響いてくるというのに、渡り廊下には僕一人しかいない。実に寂しいものだ。
そんな事を取り留めもなく考えていれば、すぐに図書室に着いてしまった。
今日一緒の当番は誰だったかな……、と考えつつ戸に手を掛ける。
かたん、と音を立てて戸を開くと、途端に古びた紙と墨の匂いがふわりと鼻腔を擽った。
部屋の中は昼間だと言うのにほんのりと薄暗い。火気の使用が認められないここでは火皿などの灯りは存在せず、日の光は本を傷める原因となるため、窓も本棚に直接明かりが届かない位置にある。
その薄暗い中に、ぽつんと小さな人影がひとつ、あった。
見覚えのある今桔梗色の制服。困ったように垂れ下がった眉に、きゅっと結んだ口。
一つ上の図書委員、中在家長次先輩だ。
「こんにちは、中在家先輩」
「……こんにちは」
ぽそり、と小さく零れた音に、小さく会釈を返す。
中在家先輩は貸出机に座り、手元には本が開かれていた。今まで読んでいたのだろう。静かな図書室で、静かに本を読んでいる人。どことなくこの雰囲気を壊すのが忍びなく思い、出来るだけ静かに戸を閉め中在家先輩の隣へと腰を下ろした。
「今日は中在家先輩となんですね。よろしくお願いします」
「……ん」
中在家先輩は短く応えを返すと、本に栞を挟み貸出机の中へと仕舞うと、今度は帳簿を取り出して席をを立った。
「今日はまず、本を戻そう……」
ぽそりと聞こえた声に従い、中在家先輩の後を追う。
図書室に来て、まず始めにやる事といえば、本の返却作業だ。
一年生から六年生、食堂のおばちゃん、先生に学園長、果てはヘムヘムと幅広く利用するために、返却された本を一時的に置いておく本棚は真新しい冊子から古びた巻物まで、実に様々な書物がずらりと並んでいる。
中在家先輩は僕に帳簿を渡すと、ずらりと並ぶ書物を抜き出して本棚の間へと消えていった。驚くべき事に、中在家先輩は……いや、中在家先輩だけに限らず、図書委員長や四年生の先輩も、ある程度ならどの書物がどこに仕舞うべきものなのか把握しているらしい。大抵僕に帳簿を預けてしまうと、後はせっせと本の返却作業へと勤しむのだ。
僕はまだ書物をどこに仕舞えばいいのか分からないので、帳簿を片手にちまちまと書物を戻していく。
一冊ずつ本の背表紙と帳簿を見比べては、本棚に記された記号を探して元に戻す。のろのろと時間が掛かってしょうがないが、これでも最初に比べたら少しは早くなったのだ。
途中、ちらりと中在家先輩の姿を目にしたけど、中在家先輩は両手でいくつもの書物を抱えては、すとんすとんと書物を戻していく。どこに何があるべきなのか分かっているその動きは澱みなく一定だ。
書物を本棚へと戻しつつ、視線の端にちらちらと映る中在家先輩をこっそりと見る。
自分から喋る事は少ない中在家先輩は、僕にとってはどうにも近寄り難い雰囲気を持つ。
委員会中の会話は最低限、そしていつも哀しそうな、と言おうかどこか困ったようなような表情が常のため、どうにも視線を向けにくい。沈黙が続き息苦しいと思うけど、かと言って声を掛けることも憚られるため、互いに一言も口を挟む事無く、傍目には淡々と仕事を熟して行った。
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