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トランスフォーマー・ロックマン・忍たまを扱っている非公式ブログ。女性向け注意!
Posted by - 2024.05.03,Fri
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Posted by 月 - 2011.08.08,Mon
「兆し」の続編的な物。
年齢操作有り。
捏造六年生注意。


大丈夫な方は以下、続きを読むより












【転化 前編】





 七松小平太。それは僕の同級生であり、同室者を指す。
 小平太との出会いは、学園が始まる数日前の事だった。忍術学園に辿り着き、新学期まで後数日という事もあって、学園の中は閑散としていた。先生や事務員、僕と同じ新入生を数人見かけるぐらいで、僕が居た場所はとても静かだった。残り数日で新しい生活が始まるという緊張の中、静かな環境は精神を落ち着けるいい時間だった。

 そこに、ひとつの風が舞い込んできた。
 吉野先生が連れて来た子供、七松小平太だ。小平太との出会いは僕にとってとても照れくさいものだった。小平太は最初、僕の字が綺麗だと言った。名簿で見た時から気になっていたのだと、どんな奴か知りたかっただと。そう目を輝かせて言った。出会ってすぐの小平太の言葉は、気恥ずかしく、またいきなり何を言っているんだという気持ちもあったが、濃紺の髪を尻尾のように揺らし、嬉しそうに手を差し出す様は、何の含みも衒いもなく、まるでじゃれつく仔犬のようで、同じ男に言うのは変かもしれないが、可愛いと思ったものだ。

 小平太のそんな明るくて気さくな態度は、仲良くなりたいと思わせるのに十分な事だった。

 けれど、それも日が経つにつれて、複雑なものへと変化していった。
 共に過ごす内に、小平太の性質というものが見えてきたのだ。
 とにかく、七松小平太と言う男は騒がしい。そして何より、自分本位だ。自分が主軸であり、自分から合わせるという事をしない。例えば、僕が本を読んでいれば「そんな物より外で遊ぼう!」と言う。
 それだけならまだいい(本に対してそんな物呼ばわりは少し感に触るが)断ればいいだけの話だ。だけど小平太はそうじゃない。
 僕が本を読みたいと言っても、関係ないと連れ出される。そうなるともう、渋々諦めるしかないのだ。
 何を言っても、小平太は聞く耳を持たないのだから。

 小平太は僕の事を気に入っているようで、授業でも遊ぶ時も僕を誘う。それは、小平太と仲良くなりたいと思っていた僕としては嬉しいものだった……けれど、今ではもうそれが苦痛に感じる時の方が多い。

 つまるところ僕は、七松小平太という男が苦手なのである。
 嫌いと言うわけではない、出来るのなら仲良くしたい。けれど、僕の心が矮小なのか今の現状に苛々して、その原因である小平太に苦手意識を持つようになった。
 出来れば余り関わって欲しくないのだけど、小平太はそれを知ってか知らずか、僕を誘う事を止めない。
 僕は小平太が苦手で、小平太は僕がお気に入り。この現状を何とかしたいと悩む毎日だ。



*



「おい、長次落とすぞ!」
「! え、……っ!」

 はっ、と気が付いた時には遅かった。
 掛けられた声に吃驚して身体が跳ね上がると同時に、持っていた本が手から滑り落ちる。
 あ、と本に手を伸ばすけれど、本は指先をすり抜けた。
 何とか掴もうと更に身を乗り出した時、がたっという音が足元から聞こえた。踏み台から足を踏み外したのだ、と気が付いた時には、身体はすでに均衡を失っていた。

 落ちるっ……!

 床に叩き付けられる本と自分自身を想像して、咄嗟に目をぎゅっと瞑った。
 だがしかし、本も自分も床に落ちることなく、大きな掌に優しく受け止められた。

「こら、ぼうっとするな。危ないだろう」
「図書委員長……」

 しっかりとした声が掛けられ、瞑っていた目を開けばそこには六年生の図書委員長の姿があった。その手には片方には落としかけた本がしっかりと握られ、ほっ、と安堵の溜息を吐いた。
 委員長は一先ず本を棚に戻すと僕を抱き起こして、大丈夫か? と訪ねられた。そこで、僕は改めてはっとさせられた。

「い、委員長、ありがとうございます……!」
「うん、お前も本も大事無いな? 長次、本を扱っている時にぼうっとするな。不注意だぞ」
「はい……すみません」

 委員長は軽く僕の頭をこつりと叩く。
 大切な本を粗末に扱ったのに、軽い注意程度であった事、仕事を蔑ろにした事が申し訳なく、僕は項垂れて謝る事しかできなかった。

「……、長次何か悩み事でもあるのか? 俺で良かったら相談に乗るぞ?」

 委員長は、そんな僕を見てどう思ったのか気遣わしげな様子で覗き込んできた。委員長のそんな様子に、気を使わせてしまったな、と更に申し訳ない気持ちになる。
 委員長の優しさに甘えている、と思うと鼻の奥がじんっと熱くなった。
 じわじわと迫上ってくる自分でも分けのわからない衝動に、視界が僅かに歪んだ。
 こんな事で泣くなんて、忍たま失格だ。我慢しようと鼻を啜り、泣くな、と念じるけど段々と息が震える。
 嗚咽が漏れそうになり、ぐっと口端を噛み締めた。

「……長次、今日は良い天気だと思わないか?」
「え……」
「良い天気の日は皆、外に出て図書室には全く人が来ないんだ。……って事で休憩だ! 長次、おばちゃんからおいしーい団子作ってもらったんだ。他の皆には内緒で分けてあげよう!」
「っ……委員長、でも、まだ仕事が……」
「後々! 折角貰った団子が硬くなってしまう! なっ、休憩だ!」

 委員長は僕の背中を押すと、あれよあれよという間に図書室の外に出る。
 部屋を出て縁側まで連れて行かれると、沓脱石の前に座られされた。あっという間の出来事だった。
 なんて素早いんだろうか。これが六年生の実力と言うべきなのか、この人の強引さなのか。まだ本の仕分けが残っていたのに、と当惑していると、委員長はにこにこと嬉しそうに僕の隣に座ると、懐から笹の包みを取り出して包みを解いた。

「ほら、食べな」
「……ありがとうございます」

 目の前に差し出される団子を受け取って、仕方ないと一口食べる。おばちゃんが作ったという団子は、お団子屋さんで出される団子と同じぐらいかそれ以上においしい。
 気が付けば何時の間にか、あの泣きたい衝動はすっかり治まっていた。
 委員長は僕が食べ出すのを確認したように頷くと、ぱくぱくと食べ出した。
 暫く、ただ団子を食べるだけの時間が流れた。

 申の刻を過ぎたばかりの天は空色に染まり、ぽつりぽつりと綺麗な白い雲が浮かんでいる。
 足袋越しに触れる沓脱石は陽の光に照らされて、ほんのりした温もりが足裏から伝わり、身体がゆっくりと暖められているような心地良さに包まれる。
 横に座っている委員長は何も言わず、傍目にはただぼうっとしているように見えた。けれど、多分、待っていてくださっている。ここに連れてきたのは休憩するためではない。僕が泣くのを、そして泣きたくないのを察知して連れ出してくれたのだ。そして、悩みがあるのなら聞いてくださると言う事だろう。
 僕がどうするかを、傍からは分からないように、のんびりと休憩しているように見せて。

 視線を委員長から手元に移す。手の中でころころと手持ち無沙汰に転がしていた串を包みに戻し、再度委員長に視線を向けた。……話してみても、いいだろうか?

「……委員長、お話、聞いていただいてもいいですか?」
「うん、聞いてるよ」

 委員長は笑って頷いてくれた。そこで、僕の気持ちも少し和らいだところで話を始めた。
 小平太……だとは言わないで、友人との出来事、それに対するやり場のない思いを。

「長次は、その子が嫌い?」

 暫く経って、話に区切りが着いた時、話を聞いてくださっていた委員長が問いかけてきた。
 嫌いなのか、それは、自分でもよく分からない。不確かな感情が入り交じる。
 小平太は人の話は聞かないし、馬鹿力で物をいっぱい壊すし、先生に悪戯をしては何故か巻き込まれ、何かと迷惑を掛けられた。
 でも、小平太は決して嫌な奴なんかじゃない。現に、僕は小平太の太陽のような、と言ったら陳腐かもしれないが、明るい性格が好きだ。僕とは違う、真っ直ぐ前を見る強い瞳。

「……いいえっ、あいつは、嫌な奴なんかじゃなくて、元気で、明るくて……嫌い、ではないと思います。ただ、ただ……」
「そっか、うん……長次。それはお前その子の問題だから、俺が口を挟む事はしないけど、長次ならきっと大丈夫だ。そんなに気を揉むな」

 委員長は暫し考えるように口元に手を当てていたが、ひとつ頷くと、優しく笑って僕の頭をぽんぽん、と優しく撫でた。大丈夫と言われ、何が大丈夫なのか分からなかったけど、委員長のその笑顔に、何の根拠もなく大丈夫なのだ、と思えた。何より、ずっと言えなかった事を言えた事で、気持ちが楽になって事もあるかもしれない。

「はい、委員長。……お話、聞いてくださって、ありがとうございました」
「いや~、相談にならなくてごめんな」
「いいえ、聞いていただいて、気持ちがすっきりしました。きっと、僕は誰かに、言いたかったんです」

 だからありがとうございます。
 委員長に礼をすると、立ち上がってごみを片付ける。改めて先程までの会話を振り抱えると気恥ずかしさが湧いてきてどうにもこそばゆく、それを誤魔化すためと、聞いてもらった囁かなお礼だ。

「委員長、仕事に戻りましょう」
「えぇ~っ! もっと休憩しようよ長次!」
「だめです」

 委員長の嘆きが空に響き渡った。

 それはそれ、これはこれだ。



*



「え~、それではこれより裏々山でのサバイバル訓練を行なう! サバイバルと言っても、数日間篭るわけではない。今回は二人一組となって、裏々山の三箇所に設置してある品物を取って来る事! 場所は渡された地図に書いているので、ここを離れてから各自確認するように! 制限時間は日没まで。では各自出発!」

 大木先生の掛け声が掛かり、ろ組全員が予め決めていた相手と共に裏々山へ入っていく。かく言う僕も、小平太と一緒に裏々山へと駆け出した。小平太と一緒というのは少し思うところがあるが、今はその事は考えないように目を逸らした。
 山道だというのにまるで気にした様子もなく、どんどんと先を走る小平太の背中を追う。
 予めどこを通って、どの順番で行くかは決めてあるし、小平太は体育委員会所属という事もあって、裏々山は何度も走り回っているらしいから、先を行く小平太が迷うという事は無いだろう。

 それにしても……小平太は自分の体力が並外れだということが分かっているのだろうか?
 離れていく距離を縮めようと追い掛けるが、距離は縮まるどころかどんどん引き離されていく。
 二人一組行動だというのに、小平太は前だけを見てより山の奥へと走る。

 はっ、はっ、っ、はぁっ、はぁっ、っ、はぁっ

 息が上がる。
 全力で走っているため、どんどん息は荒くなり、呼吸が苦しくなってくる。
 足は段々と重みを増し、引き摺るようになってきたところで、とうとう足が止まった。

 すぐ傍にある木に手をついて呼吸を整えようとするが、上がった息は中々戻らない。
 小平太は……と先を見るが、その背中はどこにもなく、ちょっと目を離した間に姿を見失ってしまった。

 自分の足がゆらゆらと揺れて覚束なく、木に寄りかかって座り込んだ。
 こんなに息が上がったのは初めてかもしれない。小平太に付き合わされて走る事も多いというのに、まだまだ体力が付いていなかったらしい。

 暫く休もうかと思ったが、先に行ってしまった小平太を追わないといけない。あの調子だともう一つ目の目的地には着いてしまっただろうか。

「あっ! 長次いたーー!」
「っわっ……!」

 置いて行かれるなんて情けない、と落ち込みかけた途端、大声で名を呼ばれて思わず身体が飛び上がった。顔を上げれば小平太が目の前に現れた。何時の間に戻ってきたのだろう。
 どこをどう走ったのか、小平太の髪には枝葉が絡まり、いつも適当に結われている髷は解けかけていた。それでも元気いっぱいな小平太は、とても裏々山を走り回った後だとは思えない。

「一つ目のところまで行ったら長次がいないから吃驚したぞ! こんなところでどうしたんだ?」
「……ちょっと」

 疲れたから、とは言いたくなかった。
 自尊心の現れだったのかもしれない。言ってしまえば小平太に負けたような気がした。

「あ、そっか! すまん長次! お前の調子に合わせるのを忘れていた! ごめんな長次!」

 かぁっと血が昇るのを感じた。
 ほんの僅かに持った自尊心は、けろっと言われたその言葉に呆気無く崩された。
 小平太の言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
 頭がその言葉だけを反芻し、他に何も考えられなくなった。

 何故 悔しい  いつも
 恥ずかしい  僕は
   ……だから、こいつはっ……!

「……ぅ……さぃ」
「長次?」
「うるさい! 無神経っ 僕は……~~っ」
「ぅわっ!? なにす、長次!?」

 気が付くと、僕は小平太を突き飛ばして走り出していた。
 小平太の声が僕の背中に掛かるけど、そんなものに構っていられなく、疲れて重たかったはずの足はそんな事も忘れてしまったかのようだ。
 どこに向かおうとしているのかなんて、自分でも分からない。
 ただ、この場にいることが、小平太と同じ場所にいることが苦痛で……逃げた。

 あぁ、僕はいったい何をしているんだろうか。



*



 裏々山を闇雲に走る。
 後ろから小平太の声が聞こえるが、何を言っているか理解する前に耳をすり抜けていく。
 声はどんどん近くなり、小平太との距離が縮まっているのが分かる。
 後幾許もないだろう。追いつかれるのも時間の問題だ。

 ……何故、僕は走っているんだろうか。
 走る意味が分からない。
 止まればいいのに、足が止まらない。
 いや、本当はこのまま……このまま?

「~~~っ! ちょーじ! そっちは谷だ! 待っててば!!」
「あ……」

 小平太の声が届いた途端、足元が滑り、身体ががくりと傾いた。

 落ちる。

 身を守らなくては、と思うが身体は弛緩したかのように動かない。
 ただ、引かれる力のまま、落ちる。

「――! ―――!?」

 小平太がこちらに向かって何を言っているようだが、何も聞こえない。
 風の音も、葉と葉が擦れ合う音も、小平太の声も、全てが。
 ただ、痛みだけが身体を支配し、それだけでいっぱいになったところで、全てが途絶えた。










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後編へ続く


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