忍者ブログ
トランスフォーマー・ロックマン・忍たまを扱っている非公式ブログ。女性向け注意!
Posted by - 2024.05.03,Fri
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by 月 - 2011.08.14,Sun
「転化 前編」の続き。
引き続き年齢操作有り。
捏造六年生注意。

大丈夫な方は以下、続きを読むより













【転化 後編】





 薬草独特の苦味が混じったような匂いが鼻腔を擽る。
 普段嗅ぎ慣れない匂いに眉を顰めて、なるべく嗅がないように布団に潜ろうと身体を動かそうとしたところで、酷い倦怠感が体を覆っていることに気が付いた。

 何故、こんなに怠いのだろう。妙に重たい。それに身体のそこかしこから鈍い痛みが伝わってくる。
 そういえば、何故僕は寝ているんだろうか。布団に入った記憶がない。
 今は朝だろうか、夜だろうか。時の感覚もまるで無い事に気が付き、居ても立っても居られず、状況を把握しようとまだ怠い、目を覚ましたくないと訴える瞼をこじ開けた。

「あ、目が覚めた?」

 目を開けた途端、掛かった声に瞠目した。最初に視界に入ったのは優しそうに笑う子供の顔。
 緩く波打った薄茶色の髪に、髪よりは濃い茶色の瞳が安堵したように細められる。
 誰だろうか。見覚えのない顔に困惑していると、それに気が付いたのか子供はあぁ、と頷いた。

「僕は一年は組の善法寺伊作。ここは学園の保健室だよ」

 よく見れば子供……善法寺は僕と同じ井桁模様の忍者服を纏っていた。
 善法寺からは薬草の匂いが強く香っており、匂いの元はここかと思った。が、その後ろに並ぶ薬味箪笥を見て、ここが保健室であるということに気が付いた。
 部屋には所々火皿が置かれ、火が灯っている事から今が夜であることが知れた。

 善法寺が後ろを振り返って、先生、と衝立の向こうへと声を掛けるのをぼんやりと眺めながら、何故、僕は保健室で寝ていたのだろうかと密かに訝しんでいると、衝立の向こうから大木先生と新野先生が出てくる。

「おぉ、長次! 目が覚めたか! 安心したぞ!」
「ほらほら大木先生、大きな声を出さないで。目が覚めたばかりですよ。長次くん、痛いところはないですか? 気分は?」

 大木先生は相変わらずの大きな声だったが、その表情は眉根が寄せられ、心配されているようだった。先生方に向かって緩く首を振って大丈夫であることを示すと、目覚めてから抱えていた疑問を投げた。

「大木先生……何故、僕は?」
「覚えてないのか?」

 こくりと頷き、寝たままでは失礼だろうと身体を起こそうとしたところで、視界の端に大きな毛玉が見えた。今まで真上を見ていたので気がつかなかったが、藍色の毛玉は僕の胸辺りで布団に顔を埋めるようにそこにいた。藍色の毛玉……違う、これは……。

「こへ、いた?」
「あぁ、小平太はずっとお前の側から離れようとしなくてなぁ……」
「あ……」

 そうだ、思い出した。
 あの時、僕は……。

「君、野外授業の時に谷に滑り落ちてしまったんだって」

 そう、そうだ。あの時僕は……。

「長次、小平太が目を覚ましたら礼を言うんだぞ。お前を見つけられたのは小平太のお蔭だ」
「小平太の……」

 大木先生は、経緯を話してくれた。
 裏々山で、皆が出発した後、大木先生は監督と採点のため皆の様子を見回っていた時、小平太の声が裏々山に響いたそうだ。それは叫びとも悲鳴ともつかない声で、何があったと大急ぎで向かったところ、そこには僕を背負って泣き濡れる小平太の姿があった。
 小平太は大木先生を見つけた途端、一目散に駈け出してひたすら泣きながら助けを求めたそうだ。
 大木先生は小平太を宥めつつ、僕を引き受けて学園へ戻ると新野先生に僕と小平太を預け、今に至る。

「いやぁ、凄かったぞ小平太の声は! 何せ裏々山から学園にまで響くかと思った程だ! まぁそのお蔭でお前たちをすぐに見つけることができたんだがな」

 そう言うと大木先生は、その大きな手でがしがしと小平太を撫でた。
 そんな乱暴に撫でては、目が覚めてしまうのではないかと心配したが、小平太はうぅん、と唸ると顔を布団へとぐりぐりと押し付けると、またすやすやと寝に戻った。余程疲れているらしい。その原因が自分である事に罪悪感が募った。
 小平太から目を逸らし、布団を握り締めていると、大木先生は小平太にした時と同じように僕の頭をがしがしと撫でる。頭ががくがくと揺れて、少し気持ち悪くなったが、ごつごつとした掌の暖かさに安心し、慰められたため我慢しようと思う。

「……さて、儂はそろそろ部屋に戻るぞ。長次、今日はここで休みなさい。新野先生、後はよろしくお願いします」
「いえいえ、大木先生もお疲れ様です。伊作くん、君も部屋に戻りなさい」
「はい、新野先生」

 大木先生と善法寺が揃って腰を上げたところで、二人にお礼を言っていない事に気が付き、急いで礼を述べた。特に善法寺は今が何の刻だかは知れないが保健委員とはいえ、夜まで付き添ってもらったはずだからより感謝の気持ちを込めて。

「うむ! だが礼は儂らだけではなく小平太にも言ってやりなさい。ずっとお前の傍に居たのだからな!」
「それじゃ、僕も部屋に戻るよ。お大事にー」

 大木先生は豪快に笑い、それじゃあな! と手を振ると善法寺と共に部屋を出ていった。

 それにしても、小平太はどうすればいいのだろう。
 このまま寝かせておけばいいのだろうか、起こした方がいいのだろうか。
 困惑していると、新野先生が優しい笑みを浮かべて、小平太にそっと上掛けを掛けてくれた。

「小平太くんはここで。きっと目が覚めた時、君がいないとまた泣いてしまいますよ」

 そう言うと、新野先生はまた衝立の向こうへと消えた。
 暫くすると、ごりごりと擂鉢の音が聞こえてくる。何の薬を拵えているのだろうか。
 部屋には新野先生の先生が居るとはいえ、姿は見えないため小平太と二人っきりのような錯覚がする。

 小平太は布団の端っこをぎゅうと握り締めて犬猫のように身体を丸めて眠っている。
 服は泥だらけで布団や貴重な畳が汚れてしまっているが、先生たちはそっとしておいたようだ。それとも小平太が意地を張ったのか。その顔はこちらからは微かに覗くくらいだが、瞼が腫れぼったく赤くなっている。余程大泣きしたのかと、顔に掛かる前髪の隙間を縫って起こさないようにそっと触れてみた。
 触れるとそこは、まるでお湯に浸かったかのようにじわっと熱が伝わってくる。普段体温が高い小平太の事、充血した事で更に熱を孕んだようだ。
 それにしてもここまで熱いと心配になってくる。冷やした方がいいだろうかと、辺りを見れば丁度よく手拭いと水差しが置いてある。恐らく汗を掻いた時のために用意されたものであろうが、ここは使わせてもらおう。

 手拭いに水を垂らし、馴染ませると瞼へと宛てがう。すると冷たかったのか、びくっ、と身体が跳ねるが、やがてゆるゆると弛緩すると、鼻を鳴らしてまた呼吸は一定の調子に戻る。
 目を覚まさなかった事にほっとして、暫くそのまま宛てがい続けた。
 小平太は横を向いて眠っているので、こうして押さえていないと手拭いが落ちてしまう。

 そうして、他に何もする事がなくなると思考は自然と大木先生の話を振り返っていた。

 谷に滑り落ちた僕は、全身を打ち付けて打撲だらけだったらしい。それは今もじんじんと痛む身体がそれを伝えてくる。まだまだ身体が出来上がっていない子供の身体なら折れてもおかしくなかったというのに、打撲だけで済んだというのだからこれは幸いだろう。
 小平太はそんな気を失った僕を、泣きながら背負って大木先生のところへ運んだと言う。
 ……僕が落ちたところは、そこまで深いわけではないが、谷だ。
 そこを同じぐらいの体格の子供を背負って行くのは、いくら小平太と言えども辛かっただろうに。

 勝手に飛び出して、その結果がこの有様だ。これでは小平太の事をとやかく言えないな、と内心で溜息を吐く。頬に着いた泥を指先で拭った時、うぅん、と小さな唸り声が上がった。見れば瞼がぴくぴくと痙攣している。やがて、小平太の瞼がゆっくりと開かれ、そこから幾分ぼんやりとした光りを纏った瞳が現れた。
 起こしてしまった、とその眠そうな表情に自分の不注意さを叱咤した時、小平太の瞳がかっ、と音がしそうな程に見開かれ、瞬時に身を起こした。

 身体を急に起こしたため、頭をぶつけそうになって慌てて首を逸らしたが、小平太は更に身体をぐっと近付けてきた。すると、普段見慣れない、小平太の泣きそうな顔が視界いっぱいに広がる。

「っ……ちょーじっ! 長次! 起きたんだな! 心配したぞ!」
「……小平太」

 そう言うやいなや、僕の身体は小平太に引き寄せられ、ぎゅうっと抱きしめられた。小平太は力の加減が出来ないため、打撲で傷んだ身体には少々堪えるものがあったが、今はその痛みを無視する事にした。
 こんな痛みよりも、小平太の泣き顔の方が余程、胸がしくしくと痛んだ。

「長次、ごめん。私が、私が長次の事傷付けるような事言ったからっ、だからこんな事になっちゃったんだ。ごめん長次……! ごめん……!」
「何を……」

 聞かされた小平太の謝罪に驚きの気持ちが湧き上がる。
 それは、小平太が言うべき言葉ではない。

「私がっ……! む、しんけいなことっ、言ったからっ……! だからちょーじっ、こん、怪我して……っ」

 息を詰まらせて、途切れ途切れ話す小平太は涙で目の周りが真っ赤に染まっている。
 無神経、と言うのは僕が言ったからだろうか。泣いて謝る小平太につられ、目の端にじわっと滲むものを感じた。
 とにかく、これだけは伝えなくてはならない。

「小平太、泣くな。お前の所為じゃない。これは、僕が悪かったんだ」

 そう、小平太は悪くない。
 やっと分かった気がする。
 僕は、小平太に振り回されている事に困っていた訳じゃない。
 僕は、戸惑っていたんだ。今までと違う環境に。気持ちの変化に。
 それを、僕は小平太に八つ当たりしていたんだ。勿論それだけではないけれど……。
 少なくとも、小平太がこんなに泣いて、傷つかなくてはならないのは小平太の所為じゃない。

「やっと、腫れがましになったのに……もう、泣くな」
「ちょーじ……」

 小平太の目元を労るように撫でると、感触が気持ちよかったのか小平太は目を細めてされるがままだ。その口元には薄らと笑みが浮かび、掌に懐くように擦り寄る様を見ると、やはり小平太は子犬のようだと思う。

「小平太、仲直りしよう。それで、もうおしまい」
「うん、うん……! ちょーじ、ごめんっ! 仲直りしてくれるか?」

 小平太の不安そうな顔に少し笑いたくなった。許して欲しいのは僕の方だ。

「僕こそ、ごめん。助けてくれて、ありがとう。仲直り、しよう?」
「……もっちろんだ!」

 小平太は晴々とした笑みを浮かべて、また僕を抱きしめた。僕も同じように小平太を抱き返す。
 嬉しそうな笑い声が首筋に掛かり、こそばゆかったけど、小平太の笑い声にそんな事どうでもよくなった。
 やっぱり、小平太の笑顔はまるで太陽みたいだ。明るくて、心が暖かくなる。



*



「おーおー、楽しそうにしちゃってまぁ」

 同級生である体育委員長の喜色を顕にした声色につられ、図書委員長は読んでいた本から校庭へ視線を向ければ、そこには可愛い可愛い後輩たちの姿。皆が皆思い思いに遊び、楽しそうな笑い声が二人が居る校庭の片隅にも届いた。

「何がだ?」
「ほら、見てみろ。お前んとこの一年坊主と、私んとこの一年坊主だ」

 体育委員長に言われ、図書委員長は再度校庭に目を向ければ、探すまでもなくちょこまかと動き回る小平太を捉え、続いてすぐ近く居る長次も。二人は他の一年生も交えてバレーで遊んでおり、丁度相手側から打ち込まれたボールを長次がトスし、小平太が打ち返したところだった。

 打ち返したボールは相手枠の隅に打ち込まれ、そのまま枠の外へと飛び出すと小平太たちは、わっと歓声を上げ、皆で手を打ち合わせていた。当然、小平太と長次も。

「あぁ……、ははっ、楽しそうだなぁ」
「な! ちょっと前までなーんかぎこちなかったのに」

 おや、と図書委員長は意外そうに体育委員長を見遣った。体育委員長は中々豪胆な性格で、そういう事に気が付く性格だとは思わなかったのだ。
 そんな図書委員長の様子に気が付いたのか、体育委員長はひくり、と口端を歪める。

「おっま、そんな意外そうな顔すんな! 私だって自分の後輩の様子ぐらい気が付くわ!」
「え~、いや、うん、そうだな?」

 あはは、と何処か納得言っていない響きを持つ笑い声が響く。体育委員長はちぇ、とそっぽを向く。拗ねてしまったようだ。そんな体育委員長に、図書委員長は先程とは違った笑みを浮かべる。

「ま、冗談だよ。そう拗ねるな」
「……あいつら見てると、誰かさんを思い出すわ」
「おや、偶然だね。俺も誰かさんを思い出すよ」

 二人は顔を見合わせると、どちらともなく笑みを浮かべ、また校庭へと視線を向けた。
 そこには、長次に抱き付き楽しそうに笑う小平太と、抱き付かれて苦しそうにしながらも笑みを浮かべる長次の姿があった。



 空は澄み渡り、太陽の光が降り注ぐ。つい数日前までは雨がしとしとと降り、湿った空気を孕んでいたというのに、今ではもう少し動けば汗が滲むくらいだ。
 こうして、世界は変わっていく。季節も人も、全てがうつろいゆく。



「お前たちなら大丈夫だって、言っただろ?」










----------------------------------------------------------------------
長次は小平太に羨望と嫉妬と劣等感と独占欲が綯交ぜになった感情を抱いています。
ただ、まだそれに気がついてはいない。
それは今度気が付くかもしれないし、ずっと分からないままかもしれない。

というかくだくだで本当ごねーんね!ε≡≡ヘ( ↑q↑)ノ

拍手

PR
Comments
Post a Comment
Name :
Title :
E-mail :
URL :
Comments :
Pass :   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
TrackBack URL
TrackBacks
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
性別:
女性
職業:
プログラマー
バーコード
ブログ内検索
カウンター
LINK
【管理者様五十音順】

<トランスフォーマーサイト様>
黄金の竜骨亭

ハテハテオリオリ

Mouse Unit

一時休戦

<ロックマンサイト様>
DK!

俺がゴミのようだ!
忍者アナライズ
忍者アナライズ
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]