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トランスフォーマー・ロックマン・忍たまを扱っている非公式ブログ。女性向け注意!
Posted by - 2024.05.03,Fri
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Posted by 月 - 2011.07.24,Sun
こへちょ出会い編。
年齢操作有り。
小平太の出自捏造注意。

大丈夫な方は以下、続きを読むより











 昼間の日差しの中以外では、まだまだ寒い季節。
 街道の広葉樹たちはまだ茶色が目立つが、よく目を凝らして見れば鮮やかな薄茶色のまだ柔らかそうな枝が手を伸ばし、その指先には小さな緑の爪がちょこんと乗っていた。
 冬から春の季節の移り変わりは確実に進み、やがては鮮やかな緑に溢れることが想像に難くない。
 そんな季節の山中を、幼い少年がひとり黙々と歩みを進めていた。





【兆し】





 家を出てから今日で四日経った。目的地はまだ見えない。あるかも定かではない場所へひたすら歩く事は精神的に疲れる。このまま約束を破って何処かに行ってしまおうかと思うけど、足は止まること無く一定の拍子で前へ歩き続けている。

 朝まで通っていた道は飛脚や私と同じような旅人が行き交っていて、一里歩く間に何人もの人とすれ違い、並ぶように歩いたというのに昼に寄った茶屋(団子が美味かった)を過ぎて、二股に別れた道を進んだ途端、すれ違う人も共に歩む人も全く居なくなってしまった。
 おまけに道は畔道のように細く途切れがちになり、殆ど獣道のようなものだ。脇から飛び出した雑草はちくちくと足を刺して段々と痛痒くなってくるし、枝が顔や胸の辺りに現れて行く手を遮るものだから鬱陶しくて敵わない。苛立つままに触れた傍からべきっとへし折ってやると、少しだけ胸が透いた。

 日が中天を過ぎた頃、丁度良く少し開けた場所が見えてきた。お地蔵様が一人、静かに佇んで道を見守っている。お地蔵様に近付くと、予想通りと言うか、所々苔生している。軽く手を合わせて挨拶を済ませ、少し休憩しようとそのまま尻餅を付くように腰を下ろした。

「っと、さすがに前に座るのは失礼か」

 ずりずりと尻を引き摺って僅かに移動する。
 四日間歩き通した身体は然程疲れていなかったけど、荷物がやけに重い。肩に喰い込んで、埋もれていくような錯覚さえした。実際、荷物は多くない。さっき通りの茶屋で買っておいた握り飯に、地図、矢立と火打石、薬、少し多目の路銀に、多額の金額が書かれた小切手一枚だけだ。だけど、朝には感じ無かった疲れが、日が進むにつれて少しずつ出てきた。身体より精神が疲れているんだろう。

 腰に引っ提げた竹水筒を呷って喉の渇きを癒す。
 ぷはっ、と息を付いてやっと一心地着くと、今度は痒さが気になって足を見れば、草履の隙間からふくらはぎにぷつぷつとした赤い発疹が出ていた。あまりの肌の荒れっぷりに顔を顰めて、とにかく手当てをしようと手拭いに水を振りかけて冷やす。

 ずっと歩き通しだった上に腫れた足には手拭いの冷たさが心地良い。手拭いを当てながらもう一方の手で括り付けていた荷物を落として中を引っ掻き回す。確か傷薬があったはず、とごそごそ探っていると指先に硬質で滑らかな感触がこつりと当たり、小さな貝殻が出てきた。
 あった、と蓋を開けて硬い薬をぐにっと掬い取って足に塗る。塗った傍から足がじんわりと熱くなり、余計痒みが襲ってきたが一時の我慢だ。

「はぁ~、腹減った……飯にするか」

 薬を塗ったら今度は腹ごしらえだ。手拭いで適当に手を拭いて今度は笹の包みを取り出す。中には茶屋で買った握り飯が二つに、沢庵が一切れ。ぐぅ~、と鳴る腹に待ちきれなくなって、直ぐにひとつ齧り付いた。米と塩の味が口の中に広がってちょっと幸せな気分になる。
 ふと、さっきの小さな貝殻を手に取る。表面は濡れたような漆黒を纏い、金と薄紅で小振りの桜が描かれている。母上が気に入ったいた物だ。家を出るにあたって母上が私にくれた物。

 それを見て、少しだけ寂しい気持ちになった。
 家を出るときに見た、寂しげな母上の姿が目に浮かんだ。

 父上は何時になったら私を許してくれるのだろうか
 何時になったら、あの家の帰れるのだろうか
 秋休みになったら?
 卒業したら?
 それとも……もう、帰れないのだろうか

 じわ、と迫上って来る物と共に鼻の奥がつん、と詰まりかけたから、考えを振り払うように首を振った。
 ぱんっ、と頬を叩いて気持ちを切り替える。

「今ここで考えても仕方ない! 細かい事は気にするな!」

 今は前進あるのみだ! と自分を奮い立たせると、残りの握り飯を急いで口に詰め込みながら荷物をぽいぽいと仕舞い直してさっさと立ち上がる。
 一度、地図に目を通して方向が間違っていない事を確かめると、後はひたすらに突っ走った。

「いけいけ、どんどーん!」

 どこか、変な調子の声だったが細かい事は気にしないと、それ以上考えることを止めた。



*



 西日を差し始め、空がうっすらと赤味を帯びてきた頃、木々ばかりが視界を埋め尽くす中、突如白い壁が見えた。あ、と思う間も無く、足が勝手に走り出す。がさがさと草を掻き分け、枝が目に入らず額を強かに打ったが、それも全く気にならなかった。

 一心不乱に足を進めると、いきなり道が拓けた。先程までは獣道を歩いているのかと思うような道とは全く違い、広くて綺麗に整えられた道に、目の前には見上げる程の高い塀が広がった。

「ここが……忍術学園?」

 塀の始まりと終わりが見えない。
 どれだけ広い敷地なんだろうか。

「あ、門があったぞ」

 遠目にも立派な門が見えた。
 ここが忍術学園なのかどうかも、行ってみれば分かるだろう。
 門の前に立つと、大きな看板が掲げられていた。そこにははっきりと『忍術学園』と書かれている。

「……いいのか、こんなにはっきりと掲げてて」
「まぁそれは色々な事情のためなのでお気になさらず。今のところは入学希望者のためと言ったところです」
「ぅわ!!? あんた誰だ!」

 応えがあると思っていなかった問いでもない言葉に応えがきた事にぎょっとして思わず情けない声が出た。声がした方を見てみれば、潜り戸から壮年の男性が出て来る。黒い装束に身を包んだ格好は正に忍者らしい。お面のような顔は上下左右対称同じように見え、だまし絵のようでくらくらした。

「まぁまぁそう警戒せずに。私はここの先生です。吉野作造と申します。あなたは入学希望者ですか?」
「あ、失礼しました、吉野先生。そうです。父の勧めで……」

 先生、と言う事で安心し、入学希望者である事を伝えた。
 すると吉野先生は、ではこちらへ、と潜り戸を開けて、手招きをする。
 入ってもいいのだろうかと少し躊躇したが、このまま門の前に立っているわけにもいかないかと、潜り戸を抜けた。

 中に入ると、塀から見た通り敷地の広さが垣間見えた。
 門を潜り抜けた途端、武家屋敷のように立派な平屋が入ってきた人を圧倒する。
 平屋の屋根の向こうから微かに覗く数階建ての建物も見える。
 特に驚いたのが塀が見えない事だ。前を見ても左右を見ても塀が見えない。見えるのは建物か、もしくは広い校庭、森のような木々の群れだ。ここから見える限りでは塀は今通った後ろしかない。これだけでこの学園が如何に広大な敷地を有しているかが分かる。

「それにしても、何故あんな林の中から出てきたんですか?」
「えっ、私はただ地図に従って来ただけなのですが……」
「うん? ちょっと地図を拝見しても? あぁこれは……」

 吉野先生は不思議そうな顔をして地図を受け取ると、あぁ成程。と納得したように頷く。

「この地図、大分昔のですねぇ。今はこの道使われてないのですよ。君はその道を通って来たのですね」
「えぇっ」
「この地図には無いですが、今はここに道が通っています。ここは道が整っていて歩き易い道だったのですが……」

 吉野先生の言葉に吃驚して足の力が抜けてへたり込みそうになった。使われていなかった旧街道。だからあんなに道が獣道かと思うような物になっていたのだろう。思うような、どころかそのものだったのだ。草に負けながらも歩き続けていたのに、まさか歩いて来た道の直ぐ近くにまともな道があっただなんて。思わず項垂れてしまった。

「まぁ元気を出して。鍛錬だと思えばいい経験です。さぁさ、手続きをしましょう」

 吉野先生は慰めるように言うと、門の直ぐ横にある机に座った。矢立と本を広げ、こちらへ、と言われ、今更だが地図をくれた者に内心で文句を垂れると、気を取り直して筆を手に取った。

 本には私の他に数名の名前がそれぞれ違う書体で書かれている。
 細いものから滲んでいるもの、細長い書体とそれぞれ違っていて中々面白い。その中で、少しばかり目を惹かれるものを見つけた。それはまるで書道の先生が書くような、均衡の取れた字だ。
 本を見る限り、今年の入学希望者が記帳したものだろう。そうなると私と同い年のはずだ。
 十歳かそこらが書くにしては、いや大人でさえこうも綺麗な字を書ける者は滅多にいないだろう。書いたであろう者の名前を何となしに覚えて、書き終わった本とともに小切手を吉野先生に渡した。

「はい、ありがとうございます。おや、この名前は……成程。……はい、問題ありません。忍術学園は、君を歓迎致します。入学おめでとうございます」

 吉野先生は何か心得たかのように笑うと(私は今まで吉野先生はずっと笑顔だと思っていたから少し驚いた)長屋に案内していただけることになった。
 しかし、成程と言うのはどう言う事だろうか。名前だろうか? もしかしたら父上と何か関わりがあるのかもしれない。何よりここへは父上の勧めで来ることになったのだから。

「――君? 聞こえてますか?」
「っ、あ、すみません、吉野先生」
「いいえ、構いませんよ」

 もう一度説明しますね、と吉野先生は嫌な顔ひとつせず、説明をしてくれた。今度は聞き逃さないようにときちんと耳を傾ける。

 ひとつ、忍術学園はとても広大なため、最初のうちは一人で知らないところに行かない事。
 ひとつ、今はまだ春休み期間のため、入学式までまだ数日ある事。
 ひとつ、長屋は二人ないし三人部屋のため、皆で共同生活を送る事。

 その他色々な説明を受けながら一年生用の長屋へと連れ立って歩いた。

「長屋は同じ組の者が同室になるのですが、組み分けはまだです。君の部屋にはもう同室者がいるのですが、今後の組み分けによっては別の者が同室者になるかもしれません。ですが、仲良くするようにね」
「同じ部屋の子……どんな子ですか?」
「そうですねぇ……大人しそうな子でしたよ」

 どんな子だろうか……仲良くなれるかな?
 今までは一人部屋を与えられていたから、他の人と寝た記憶など数えるほどしか無い。

 渡り廊下を進むと、部屋の前を通りかかる度に中から声がする。
 優しそうな声に神経質そうな声、生真面目そうな声が聞こえ、少しずつ緊張してきた。
 やっと、実感してきた。

 これから私は、ここで生活するのだ。未だかつて経験した事のない親元を離れ、学ぶ事。
 そして、ここには私と同じく親元を離れた者たちが大勢集まっているのだ。

「さ、着きましたよ。ここがあなたの部屋です」

 案内された部屋は長屋の中程、長年使われて来たのだろうと簡単に想像できる部屋の前に着いた。部屋の古びた引き戸は手を掛ける部分だけが鈍く光沢を放っている。
 横の柱には鉤が打ちつけてあり、間新しい木の板が突っ掛けられている。木の板には『中在家』と書かれ、それがこの部屋の住人の名前だろう。

 ん? 中在家……?
 どこかで見た覚えが、と首を傾げたところで、吉野先生が中に向かって声を掛けた。

「中在家君、中在家君。居ますか? 吉野です」
「……はい」

 返って来た応えは短かった。大人しい子、と言う通り小さな、声。
 声変わり前の高い声はどこか澄んだ色を持って響く。

 少し間を置いて、引き戸がからり、と音を立てて開いた。
 中からは私よりちょっとだけ背の低い男の子が出てくる。
 この子が中在家だろうか。

 後ろで括られた焦げ茶色の髷は仔馬の尻尾ように短く、ぴょこんと揺れた。髪より濃い色の眉は太く、筆で線を引いたかのように真っ直ぐだ。黒々とした目は少し垂れ気味で少し泣きそうな顔にも見えた。

「中在家君、君の同室者です。今日来たばかりなので、何か分からないことがあったら教えてあげて下さい」
「はい、吉野先生」

 男の子はやはり中在家で間違いないらしい。中在家は小さく頷くと、引き戸から身を横に移して手招きした。
 私は招かれるまま部屋に入ると後ろで吉野先生が、それではまた。と言って引き戸を閉めようとしていたので、慌てて頭を下げてお礼を言うと、吉野先生は、また深く笑って引き戸を閉めて去っていった。
 静かな足音が途切れた頃、私はやっと部屋の中を見渡した。

 中は板張りの四畳程の小さな部屋だ。十歳を過ぎたばかりの子供が住むのであれば十分な広さだと思う。壁際には押入れがあり、そこに布団や着物を入れるのだろう。もう一方には文机が二つ並び、片方には中在家の物だろうと思われる本が一冊置かれていた。

「あの……」

 ぼそり、と小さな声が掛かった。
 声の方を振り返ると、中在家が所在無く立っている。
 自分の方が先に居たと言うのに、中在家の方が借りてきた猫のようで少しおかしかった。

「あぁ! そうか自己紹介していなかったな! 私は七松小平太だ! お前は?」
「僕は、中在家、長次。……よろしく七松君」
「よろしく! ……ん? んー……」

 中在家長次。やっぱりどこかで見た気がする。

「七松君、どうかした?」
「あ! 思い出した! お前長次だろ! 中在家長次!」
「? さっきからそう言ってるよ」

 中在家、じゃなかった。ここは親しみを込めて長次と呼ぼう。長次は話を聞いて無かったのかと眉間に皺を寄せて顔を顰めた。そうするとますます泣きそうな顔に見えたから、慌てて説明をした。

「入学簿のすっげぇ綺麗な字! あれ書いたの長次だろう!? 綺麗な字だったからさ。気になってたんだ! 同い年なのに先生みたいで、どんな奴が書いたのかと思ったんだ! 長次だったんだな!すげぇなー!」
「……別に、大したことない、よ」

 長次は俯いて素っ気無く言うけど、髪から覗く耳がほんのり染まっていて、照れている事が丸分かりで、それがちょっと可愛いと思った。

「な、長次! 私の事は小平太って呼んで! 私も長次の事、長次って呼びたい!」
「こ、へいた……?」

 長次は恥ずかしそうに顔を上げると、恐る恐るといったように私の名前を口にした。なんだか凄く、嬉しさがこみ上げて来て、思わず飛び跳ねたくなるようなわくわくとした高揚感に満たされる。
 昼間に感じていた疲れなんか、どこかに行ってしまった。

「これからよろしくな、長次!」
「よろしく……小平太」

 差し出した手に、長次は少し驚いたような顔をした後、ぎゅっ、と握り返してゆっくりと笑った。
 困ったような顔の長次が笑うと、泣き笑いに似ていた。でも、頬を赤らめて笑う長次は嬉しそうに見えたから、私は安心して笑った。

 不安な事は多々あるけど、長次と出会えて少し、不安な気持ちが消えた。





 それが、私の長い学園生活の始まりだった。










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小平太は地主の子という設定。
言葉遣いや性格、私服の感じからいいとこの坊ちゃんという印象があったので。

長次は始めは僕呼びだといいなぁ、と。

これを基に短編を書けたら書きたいです。根性次第。

関係ないですけど、幼稚園の時一人称が『名前』だったんですが(月はね~みたいな)私と言うようにしなさいと先生から言われませんでしたか? 小さい時は『私』と言うのが恥ずかしくて中々言えなかったのを思い出しました。
今なら
一人称が名前である方が恥ずかしいのに、小さい時の思考は自分でもよく分からない(笑)

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